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於來見沙都(おきみさと)の無謀なる挑戦! ――翻訳サイトで自分の小説を訳してみよう

● 文化の差をうめるのだ ●

 今日は疲れたので、ちょっと本文から離れてみたりする。
 訳しているうちに、あることが気にかかりはじめたのだ。この小説、日本人にしか通じないところがたくさんある。縁側、つまりベランダの上に人が座ったり、男が「月にうさぎがいる」と叫んだりするところがあるけれど、アチラの人には「???」かも知れない。
 だいいちこの話は、かぐや姫が美しくて冷たい処女――月の住人であってプライドが高く、決して生身の男とは交わらない女である、ということを知らなければ、隠し味が分からない作りになっている。
 これじゃいけないというので、とりあえず思いついた部分の注釈を考えることにした。
 翻訳プログラムの手に負えるよう、下手な日本語で注釈の原案を作る。これをいつもどおり、とりゃっ! と翻訳にかけるのだ。

日本の縁側は、中庭に面した廊下を持っていて、人々はそこに座ってくつろぐ。
The veranda in Japan has a passage facing the courtyard, and people sit there and relax.

日本では、月の表面の陰影を、うさぎが餅をついている姿に見立てる。
In Japan, a rabbit likens the shade of the surface of the moon with the figure which attaches rice cake.

かぐや姫は日本のお伽話だ。彼女は光る竹の中から生まれた。彼女はとても美しいので五人の貴公子に求婚された。しかし、彼女は無理難題を言って彼らを拒絶した。皇帝も彼女に求婚したが、彼女は毎日、月を見て泣いていた。養父母がその理由を尋ねると、彼女は答えた。
「私は月の住人です。もうすぐ月から迎えが来ます」
 そして、皇帝や養父母が引き止めたにもかかわらず、彼女は月に帰ってしまった。
Moon Princess is 伽話 of Japan. She was born out of the shining bamboo. Since she was very beautiful, five persons' young noble proposed to her. However, she said the unreasonable demand and refused them. Although the emperor also proposed to her, she looked at the moon and was crying every day. When the Yabu mother asked the reason, she answered.
"I am the resident of the moon. Although welcoming's coming from the moon soon"
, and an emperor and the Yabu mother kept back, she has returned to the moon. a

 “餅をつく”が“ライスケーキをアタック!”に訳されているあたり、ほのぼのと笑えるんだけれど、どう訳したらいいのか大弱り。辞書を引くと、ライスケーキはcookするものじゃなくてmakeするものなんだそうな。なんで? あの激しいアタックはクッキングには見えないということかしらん。うどん粉やそば粉で麺(めん)を打つのも、アタックにしか見えないから料理の仲間に入れてもらえないとか。ならパスタはどうよ(笑)。
 “わたしは月の住人です”は、月の住人を意味する“the resident of the moon”がなんかイヤ。辞書で引くと、なんとなく月に住民登録しているみたいな感じで情緒がないのです。ここは一発、“わたしはムーン・プリンセスなのです”で誤魔化しましょうね。うふふふふ。
 “迎えが来る”は単に"come for me"。英語にしてはファジーなの。“月からやって来る”とか“わたしを月へ連れて行こうとする”とかに訳した方が、初心者は安心できるんだけれども、実はこの言い回しにはしかけがあるのです。はっきりとは訳せない超日本的な事情がある、ということはおいおい語ることにいたしましょう。
 というわけで、今日の成果は注釈です。これからも必要に応じて適宜つくっていきます。

日本の縁側は中庭に面した廊下を持っており、そこに座ってくつろぐことができる。
Japanese veranda has a passage facing the courtyard, and people sit on there and relax.

日本では、月の表面の陰影が、餅つきをしているうさぎに見立てられる。
In Japan, the shade of the surface of the moon is likened to a rabbit makeing rice cake.

『かぐや姫』は日本の民話である。彼女は光る竹から生まれた。非常に美しいので五人の貴族に求婚されたが、無理難題を言って拒絶した。彼女は帝(みかど)にも求婚されるが、毎晩、月を見て泣く。養父母がその理由を尋ねると、
「私は月の住人です。もうすぐ月から迎えが来ます」
 と答え、帝や養父母が引き止めたにもかかわらず、月に帰ってしまった。
"Moon Princess" is a folktale of Japan. She was born in the shining bamboo. Since she was very beautiful, five noblemen proposed to her. But she made some unreasonable demand and refused them. Though the emperor also proposed to her, she looked up at the moon and was sobbing every night. When her foster-parents asked the reason, she answered.
"I am Moon Princess. before long, someone will come for me."
The emperor and her foster-parents try to detain her, but she returned to the moon.
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