. . . . . . . . . 10| エッセイ目次 | HOME


於來見沙都(おきみさと)の無謀なる挑戦! ――翻訳サイトで自分の小説を訳してみよう

● 難しいけどがんばれっ(泣) ●

 きのう妥協した“月の光を浴びて”という表現を思い出したので、こんな風に変えてみた。
They say that her face was light up white basking in the moonlight when she sat on the veranda and looked up the sky.
 ついでにsat downをsat onに変えてたりする。
 さてと。今日は次の部分に挑戦してみるのです。

夏休みで子供を連れて帰省した女に、ついてきた夫がある。
There is a husband who followed the woman who was accompanied by the child and went back in the summer vacation.
かぐや姫のうわさを知らず、なんの気なしに竹林のあたりを通り過ぎようとした。
It was going to pass Takebayashi's hit without what [ not knowing and ] mind for Moon Princess's rumor.
満月の夜だった。
It was the night of a full moon.
灯りのない田舎家から老婆の声が
An old woman's voice from a farmhouse without a light
「虹を見かけませんでしたか」
"Wasn't the rainbow seen?"
と尋ねかけた。
It was asking.
藁葺(わらぶ)きがしゃべったようで、男は飛びあがった。
The man flew and went up depending on the method of 藁葺 (わらぶ) きがしゃべった.
かきねごしに振り返ると、縁のうえにちょこんと座る者がある。
When it writes and turns round over ね, ちょこん and those who sit down are in on an edge.
「虹……。虹は見かけませんでした。こんな夜ではなおさらに……」
"A rainbow .... The rainbow did not see. such night -- still more -- alike .... "
長い間があった。
There was a 長い間.
男はそこに失望があるのを読みとった。
The man read that disappointment was there.
「なぜ虹が気になるんでしょう」
"A rainbow will be [ why ] worrisome."
「月の虹を見るまでは、わたしは死ぬことができません」
"I cannot die until it sees the rainbow of the moon."
「それはなぜ」
It is "it is why."
竹が風にざわめいた。
The bamboo was noisy to the wind.
老婆は背後の闇へ向かって
An old woman goes to darkness in back.
「お母さん、寒くない」
"mother," which is not cold
と尋ねかけ、沈黙を聞きとってから向き直った。
It was asking, and after catching silence, it turned round.

 根拠はないけどThere is a husbandなんて言うと、誰のダンナ? ということになりそうだから、夫を男、女を妻にしておこう。こんなに長い文章にもかかわらず、どういうわけかほとんど使えそうな訳文に見える。凄いぞエキサイト翻訳。こんなの自分では考えつかない。次。
 “なんの気なしに”が訳せてないみたいだから、“何気なく”で検索してみる。結構いっぱい出てきて何がなんだか分からないが、気軽な散歩がてらでってことで、casuallyを使ってみることにした。カジュアリィって、いかにもふらっと通りかかりましたみたいだし。
 次の次に出てくる文章は“老婆の声が、灯りのない田舎家から彼に尋ねかけた。”で訳してもらったら、ほとんどそのまま使えそうな気がした。
 “虹を見かけませんでしたか”は"Did'nt you see..."とやらないほうがいいような気がする。なんでかって言うと、昔『E.T.』の映画を見に行ったときに、お母さんが子供にかける言葉がそんな感じだったからだ。英語で「〜しなさい」というのが字幕ではみんな「〜しちゃダメ」になってたり、「あなたは〜するの?」が「あなたは〜しないの?」になってたりして、きっとあちらの日常会話では日本語ほどそういう言い回しをしないんなあと思った。(字幕の「来ちゃダメ!」が"Go away!"だったりしたの) んで、英語版では“虹を見かけましたか?”にしてみたり。
 “藁葺きがしゃべったようで”は、“まるで屋根が話したかのようだった。”で再検索。藁葺きも辞書で引いてみる。“飛びあがった”は驚くようすを現した慣用句なので、"He flew"はないだろう。ギクッとしたというところか。しかし、驚くという単語は乗っていても、中学生辞書にはギクッとするだのビクッとするだの、そんな気の利いた言葉は載ってない。いろいろ調べて、ぎょっとする、という説明のついた単語を採用。
 次は“彼が垣根ごしに振り返ると、縁側に座る者がいた。”で再検索。“ちょこんと”だとかいう擬態語は、このさい捨てるわ。垣根がフェンスと訳されるのが風情がなくて気にくわない。辞書を引いたらhedgeというのがあったので、こっちにしてみた。
 “なおさらに”ってのも、日本的ファジーで訳しにくいなあ。なおさらどうだというのか、きちんと書いとかないといけないかなあ。英語って、合理的だけれど無粋なのね。
 “間がある”っていうのもまた、日本的な表現。次にしゃべり出すまでの間があるわけで、単に沈黙したのとは違うんだけれど、英語でこのニュアンスを出すのはわたしにはムリ。There was long silence.(長い沈黙があった)なんて文章が通じるのかどうか、これも未知数だから、かぐや婆には単にしばらく黙っててもらうことにする。
 “読みとる”をまんまreadとやっていいのかどうか迷った。“心を読む”という言い方は向こうにもあるらしいのだが、よく分からないのでunderstandを採用。
 “お母さん、寒くない”という短い文章がまるっきし訳せてない。試しに色々な文章にしてやってみたが、エキサイト翻訳は頭に血がのぼってエキサイトしちゃったのか、からきしダメだった。前述の理由から"Are you cold?"の方が良かったかなと思いつつ、なんとなくここは直訳してしまった。
 沈黙を聞きとるという表現、直訳して向こうに通じるかしら。不安だけれどafter catching silenceは採用。沈黙なんてキャッチするもんじゃない! という苦情が入ったら(誰も読みゃーしないけどね)、
「文化の違いですね」
 とジャパニーズ・スマイルでお答えしようっと。

 今日の成果はこんな感じになった。

夏休みで子供を連れて帰省した女に、ついてきた夫がある。
There was a man who followed his wife who was accompanied by their children and went home in the summer vacation.
かぐや姫のうわさを知らず、なんの気なしに竹林のあたりを通り過ぎようとした。
He had not heard Moon Princess's rumor, and was going to pass near the bamboo grove casually.
満月の夜だった。
It was the night of a full moon.
灯りのない田舎家から老婆の声が
「虹を見かけませんでしたか」
と尋ねかけた。
An old woman's voice was asking him from the dark farmhouse.
"Did you see a rainbow?"
藁葺(わらぶ)きがしゃべったようで、男は飛びあがった。
It seemed that the straw-thatch talked, then he was frightened.
かきねごしに振り返ると、縁のうえにちょこんと座る者がある。
He turned round over the hedge, then someone was sitting on a veranda.
「虹……。虹は見かけませんでした。こんな夜ではなおさらに……」
"A rainbow ....I did'nt see it. In such night,it's still more difficult to see."
長い間があった。
She was silent for a while.
男はそこに失望があるのを読みとった。
He understood that disappointment was there.
「なぜ虹が気になるんでしょう」
"Why do you care about the rainbow?"
「月の虹を見るまでは、わたしは死ぬことができません」
"I cannot die until I see the rainbow of the moon."
「それはなぜ」
"Why?"
竹が風にざわめいた。
The bamboos were noisy to the wind.
老婆は背後の闇へ向かって
「お母さん、寒くない」
と尋ねかけ、沈黙を聞きとってから向き直った。
She was asking toward darkness in back.
"Mother, aren't you cold?"
After catching silence, she turned round.
次頁 | 前頁 | エッセイ目次 | HOME
Copyright (c) 2003 Misato Oki All rights reserved.