このエッセイを書くために調べものをしていたら、「直立四足歩行」なる言葉にでくわした。トカゲのように足が横っちょから出ていて、ガニ股になっているのは「直立」四足歩行ではないそうだ。馬や猫のようなのが、直立だという。前々から直立歩行=二足歩行ではないような気がすると思っていたが、やっぱりそうだったのか。
よく考えると「直立」というのは「まっすぐに立つ」ということだ。四の五の言わずにまっすぐ立って歩いてりゃ、なんでも「直立歩行」なのかも知れない。
それでは「完全」二足歩行というのは、なにものなのだろう?
「完全っていうのは、一日中ってことなんじゃないの?」
という疑問がおこってくる。前足を、歩くためには全く使わないということだ。
しかし理由は分からないが、わたしの通った学校の先生によると、鳥は完全二足歩行ではないそうだ。どう見てもガニ股ではないし、鳥なりにまっすぐ立って歩いているように思うが、直立歩行だとも認めていない。鳥の直立姿勢がわたしたちと違うのは、違う動物なんだから仕方ないんじゃないの? あれを「鳥型完全直立歩行」ないしは「鳥型完全二足歩行」と呼んでなぜいけないのだろう。
少なくとも二足歩行に関しては、わたしたちよりはるかに先輩に違いない鳥さんにむかって、
「お前たちの二足歩行は完全じゃない」
なんて、なんとなく失礼な気がする。人類は二足歩行に最適な体を持っているんだと言うけれど、ダチョウはいうにおよばず、カンガルーのピョンピョン歩きにだって、速さではまったくかなわない。鳥や恐竜の歩き方を、「元祖二足歩行」と呼ぶくらいの謙虚さがあってよいと思うのだが。なんてことを考えながら探すうちに、「鳥は完全二足歩行である」と書いた本を発見。どうやら先生は、直立歩行と二足歩行をごちゃ混ぜにしていたらしい。
こうしてめでたく、完全二足歩行とは「前足がそもそも歩行用の作りになっていないために、二本足で歩かざるをえないこと」であると知れた。「一日中二本足」という子供の頃の直感は、あながち的はずれではなかったらしい。
ううん、……待てよ……。
だとしたら、「直立歩行」とは何かについて、子供の頃どんな直感をもっていただろうか? サルが四足歩行動物だということは分かったけれど、二本足で歩いている瞬間さえも直立歩行ではない、というところがどうしても分からなかったのだ。仕方なしに「サルは歩くのヘタだから」と言い聞かせてむりに納得していた。
歩くのがへた。一見アバウトなようだが、実はその答えが案外近いのかも知れない。