「人間と動物の違いはなんだ? 分かる人!」
あるいは
「みんなあ、サルとヒトはどこが違う?」
であったかも知れない。
「(優等生、まじめくさって)はい、人間は二本足で歩きます」
「(ライバル、優等生をためす)サルだって二本足で歩くんじゃないですか?」
「サルのは直立歩行じゃありません」
「どうしてですか?」
よくあるパターンだ。
ちょっと思い出して欲しい。あなたの先生やクラスの優等生は……この質問になんと答えただろうか。
「とにかくサルのは完全な二足歩行じゃないんです」
「(先生、助け船のつもりで)サルはよく見てると、二本足でも歩くけれど、手をついて四本足で歩いたりもするからな」
それじゃあ、二本足でしか歩かないように訓練されたサルがいたら、二足歩行もしくは直立歩行と認めてやるのか?
「なら先生、鳥は?」
「鳥はちょっと違うんだ。見ればなんとなく分かるだろ? とにかく完全直立歩行をするのは人間だけなんだ。分かったな?」
それじゃ分からん。
しかし先生の頭のうしろからは
「てめえらそれ以上きくんじゃねえ、ぺぺぺのぺっ!」
とでもいうような気迫が、陽炎《かげろう》のように立ちのぼっている。なんだかよく分からないけど、そういうことになってるらしい……。というようななりゆきで、
「完全直立二足歩行をするのは人間だけである」
と丸暗記させられたりはしなかっただろうか。
それでいいのか? と今も思い続けているあなたに、このエッセイを捧げたい。
※ 生物学や進化論に詳しい人にとっては、基本のキの字であることだろう。しかしわたしはこの問題について、今のところ「素人にも分かりやすい」といえる良い資料にはめぐり会っていない。初心者用の入門書を読んでも、
「説明するまでもなく、アンタたち分かってるんでしょ。直立歩行をするのは人間だけよ」
とばかり、たいした説明がないのは事実だ。
「説明するまでもなく、アンタたち分かってるんでしょ。直立歩行をするのは人間だけよ」
とばかり、たいした説明がないのは事実だ。