う〜ん、どうしたんだっけ。
ま、いっか。
これからあとの旅行記は、それなりの確率で時間が前後したり飛んだりしていると思います。
が、それを指摘できるのはこの世に2人だけですわはははは。気にしちゃいけません。
(*) シシカバブって、いつ聞いてもへんな名前だなあ。(*)
※ ※ ※
いつだったか思い出せないけれど、古本屋に寄りました。姫さんが、
「この近くに面白いお店がある」
と言ったからです。本の中にベッドが埋もれていたり、ハシゴのような階段の下から本の山が見えたりして、すんごい蔵書でした。
欲しいのも目についたんだけれど、極大ハードカバーの分厚い本で、こんなもん買ったひにゃあ、重すぎて故国へ帰れません。あきらめて売り棚を離れようとすると、通路に座りこんでる兄ちゃんがいました。
ふにゅ。なんでこんな狭いとこに座ってるんですかいのう。通行の邪魔でござる。こういう若者の生息地って、日本だけじゃないんだわ。ああ嘆かわしい。
なーんて思いながらむりやり通ろうとしたら、座りこんだ兄ちゃんと目が合ってしまいましたよ。
「うっ……!」
ななななな、なんなんですか、この色っぽさは!
通りすがりの中年女ABCを見るだけのためにイキナリ色気を出したりして、そーゆーのをムムムムム、ムダと言うのでござるよ。
まずい、ドキドキしてきたわ。
なんでお目々がきらきらなの? 唇も赤すぎなんですけどぉ!
――なんて思ったのがたぶんいけなかったのです。その夜の夢見が最低でした。悪夢だったということは分かるんですが、内容は覚えていません。暑くて暑くて苦しくて、思わず毛布をハネるとガバッと起きあがりました。
う〜。あ〜た〜ま〜が〜。
ぜんっぜん働きません。なんだかよく分からないけれど、目のまえの人影が、
「だいじょうぶ?」
とかなんとか言っているような気がしました。なんだかよく分からないけれど、トイレに入りました。ベッドへ戻ったあたりで人影は知り合いだと気づいて謝ったような気がするんですけど、なにを謝ってたんでしょうか。
その後も断続的な短い悪夢に悩まされていたような気がします。
ミロのビーナスに手が生えて、スカートのすそをたくしあげながらドタドタ走り回ってたなあ……。
なーんて書くとコメディみたいなんですが、とにかくひどい気分でした。手のついたビーナスが妙にシュールで、見てると吐き気がしてくるの。
とにかく彼女は、走り“回り”ます。美術館のホールとか、らせん階段とか。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
……………………………………。
※ ※ ※
目を開けたら、天井が回っておりました。
回るぅ〜、回る〜よ、地球は回る〜♪
歌ってごまかしてもダメですね。血圧が下がりました。ビーナスが回ったから目を回したのではなく、目を回したからビーナスが回る夢を見たのです。
しばらく目を閉じてじっとしていたら、じきに治ってきましたよ。ああ、やれやれ。ふにゃっと起きあがると、姫さんと桐葉さんが、またもやこっちを見ています。
ギクッ。
「あのー、ゆうべなんかまた寝ぼけて、ぶっきらぼうな態度とったみたいな気がするんだけど」
と言って謝ったら、笑われました。
「でもまあ、ゆうべは前のときよりはっきりしてたみたいね」
トイレに入ったり、出てきて謝ったりしたのはホントらしいです。記憶と一致してるわ。少しホッとしたかも。
力がぬけてベッド脇に置いたスーツケースに抱きついたら、ひんやりと柔らかい感触がしました。気持ちいい〜!
んんっ? スーツケースが柔らかい?
それってなんか変ではないの。
改めて見直すと、スーツケースには分厚い濡れタオルが乗っています。
「なんでこんなところに濡れタオルがっ」
ひょっとすると、寝ぼけて自分でやったんですか!? トイレでわたし、一体なにをっ。
「あー、それはねー。ゆうべ
そっ、そんなこと……。
覚えてないわああっ!!(号泣)