★ガーラント物語シリーズ『ヤンツェルトの日誌』―― 銀沙の旅路(サイト閉鎖) 桜川夏さん
彼が口元をゆがめているのは、悔しがっているわけでもなければ、悪だくみをしているのもでもありません。昼ごはんのあと、奥歯にはさまった食べかすをシーシーしているのです。
彼の名はハイン・ヤンツェルト。栄えある俗物代表として、当サイトにお越しいただきました。
俗物だからってあなどっちゃあいけません。ガーラント氏から主役の座を奪い、よりによってシリーズ最後話(掲載当時)を仕切ってしまった大物です。彼はこの大仕事を、「退屈でつまらん」とぼやきながら、俗ぅ〜な雰囲気でなしとげました。
最初に描きあげたとき、西洋人であるはずの彼が、あまりにも日本人オヤジなことに驚愕《きょうがく》してしまいました。
俗物=その辺にいるヤツ=日本のオヤジ、という感覚で描いてしまったんですね。北京原人のように頬骨が高く、のっぺりと横長の顔に。さすがにまずいぞ、というので慌てて修正をかけたのがこの絵です。
ひと筆いれるごとにハンサムになっていく彼の顔を見ながら、
「こんなのアタシのヤンツェルト様じゃないわ。ほんとうのあの方はもっとブ男でいらっしゃるのよ」
と泣いたりもしました。
そのわりにどう見ても東洋人なのは、頭蓋骨のレイアウト自体を間違っちゃったせいなのでした。